犬の嗅覚を獲得した男は、なぜ、考えることができなくなったのか？

その医者は、ある朝、目が覚めると、犬の嗅覚を獲得していました。
嗅覚だけでなく、あらゆる知覚が今までの100倍以上になっていました。
視界がくっきりして、微妙な色の違いをはっきりと区別できます。
でも、嗅覚に比べると、他の知覚は大したことありません。
嗅覚は、認識する世界を一変させました。
あらゆる物を生々しく感じます。
今まで生きてきた世界は、ゲームの中のような空虚に感じます。

それが、今は、
「これが、生の現実か」
って、ありありと感じます。

さて、あまりにもリアルに現実を感じると、どうなると思います？
それは、考えることができなくなるんです。

考えるという行為は、抽象化して客観的に認識して初めて可能なんです。
それが、現実が生々しすぎると、現実にとらわれて、客観的に判断することなどできません。
自分が現実世界の一部に取り込まれて、身動き取れなくなるんです。

ここに、人類の進化の重要なヒントが隠されています。