脳型コンピュータに本当に必要な機能1 ー ウェイソンの4枚のカード問題

脳型コンピュータに本当に必要な機能1 ー ウェイソンの4枚のカード問題

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今回は、人間と同じ脳をコンピュータで作るのに必要な機能について考えてみます。
典型的な人間の脳のサンプルとして、山田部長をお呼びしました。

「私が山田じゃ。今日は、何をすればいいんじゃ?」
「いくつか、質問に答えてもらうだけで結構ですよ」

「最近、未成年の飲酒が問題となっていますよね。そこで、居酒屋での実態調査を手伝ってもらいます」

 

「居酒屋のカウンターで4人が飲んでいます。1番、2番は席を外して飲み物だけが置いてあります。
1番は、ビール、2番は烏龍茶です。
3番はハゲ親父(65歳)で、4番は女子高生(17歳)が座っていますが、何を飲んでいるのかはわかりません。
さて、この中で、何番と何番を調べれば、誰が未成年で飲酒しているか確認できますか?」

「そんなの簡単じゃ。1番のビールを飲んでるのが何歳かと、4番の女子高生がアルコールを飲んでるかを調べればいいだけじゃ」

「ピンポ~ン!正解です。さすがですねぇ」

「まぁ、な。こう見えても、30年以上、営業畑を歩んできたからな。
人物の観察眼だけはあるんじゃよ」

「調べた結果、1番は32歳のサラリーマンで、4番は、焼酎のお湯割りを飲んでいることがわかりました」

「何!女子高生が焼酎のお湯割りだと!
けしからん!
女の子らしく、カシスオレンジにしておけばいいものを」

「いやいや、カシスオレンジでもダメですよ。
次は、第二の問題です。
ここに、4枚のカードがあります。
それぞれ、片面にはアルファベット、もう片面には数字が書いてあります。

「『片面のアルファベットが母音なら、その裏面は偶数でなければならない』
というルールが成立しているかを調べるには、どのカードとどのカードをひっくり返して確認すればいいでしょう?」

「急に、ややこしい問題になってきたなぁ。
なになに、母音の裏が偶数でないといけないということは、母音の『A』のカードと偶数の『4』のカードの裏を確認すればいいんじゃないのか?」

「ブッ、ブー!
残念でした。正解は、『A』と『7』のカードです。
なぜなら、『母音の裏が偶数でないといけない』ということは、母音の裏は絶対、偶数でないといけないとは言えるけれど、偶数の裏は、必ずしも母音でなければならないとはならないのです。
つまり、偶数の裏は母音でも子音でもOKなので、『4』のカードを裏返しても意味がないのです。
『母音の裏が偶数』ならOKということは、言い換えると『母音の裏が奇数』だと、絶対、ルール違反となるのです。
だから、確認すべきは奇数のカードなので、『4』でなく『7』のカードなのです」

「う~ん、ややこしすぎて、何を言ってるのか、さっぱり分からんわい」

「そう思うでしょ。
ところがですね、このカードの問題と、さっきの居酒屋の問題は、数学的には全く同じ問題なんですよ」

「そんなことはないじゃろ」

「いえ、どちらも二つの条件ABの組み合わせを満たしているか、いないかを問う問題なのです。
一つは、『お酒を飲める(A)のは、20歳以上(B)でないといけない』という組み合わせ、
もう一つは、『母音(A)なら、偶数(B)でないといけない』という組み合わせです。
どちらも、『条件Aなら、条件Bでないといけない』という問題なのです。
質問の内容を変えるだけで、同じ問題でも、難しさが、これだけ変わるんですよ」

「う~ん、たぶん、居酒屋の問題は、日常生活で慣れてるからすぐに分かっただけじゃよ。
母音とか偶数とか、そんな、普段使わない難しいことを言われても、分かるわけないわい」

「それじゃ、母音と偶数をやめて、もっと日常生活で慣れ親しんだ問題にしてみましょう。
『麺類は500円以下でないといけないと』いうルールがあるとします。
次のうち、このルールに違反していないか調べるには、どれとどれを調べればいいでしょう?」

「えーっと、
麺類を調べるのだから1番のラーメンじゃな。
あと、500円以下を調べるのだから、4番の300円じゃな」

「ブッ、ブー!
正解は、1番のラーメンと3番の800円です」

「う~ん、毎日食べてるラーメンでも、よく分からなくなるなぁ。
慣れてるから分かるってことでもないのう」

「それでは、最後の問題です。
新しい法律ができました。
『ハゲてもいいのは、55歳以上だけ』と決まりました」

「なんちゅう、法律じゃ。
しかし、わしは、57歳じゃから、これだけハゲてても法律違反にはならんのぉ。
悪くない法律じゃの」

「居酒屋のカウンターに4人が座っています。
1番の席は、見るからにハゲ。
2番の席は、フサフサ。
3番、4番は、帽子をかぶっていてわかりませんが、3番は65歳、4番は35歳とだけわかっています。
4人のうち、ハゲ法に違反してないか確認するには、誰と誰を調べればいいでしょう?」

「こんな重要な法律を破るやつは、いったい誰じゃ!
まずは、1番のハゲの年齢を確認する必要があるのぉ。
次は、4番の35歳の若造が、ハゲかどうか、確認する必要があるな。
この問題は、簡単じゃわい」

「ピンポーン!
正解です」

「じゃ、さっそく、確かめてやれ」といって、山田部長は、4番の男の帽子を後ろからさっと脱がせました。

「なっ、何をするんですか!
やめてください」

「やっぱりハゲておったな!
35で、そこまでハゲるとは、無期懲役じゃ~!」

 

二人のことは置いといて、話をもとに戻しましょう。
今回のゲームは、「ウェイソンの4枚のカード」と呼ばれる心理学実験の問題でした。
数学的には同じ問題なのに、問題の出し方によって、簡単になったり、難しくなったりします。

今回のテーマは、脳型コンピュータです。
なぜ、ウェイソンの4枚のカードの話をしたかというと、人間の脳は、コンピュータとは違うということを示したかったからです。
もし、コンピュータなら、数学的に同じ問題なら、変数の中身が変わっただけで、解けたり解けなかったりしないはずです。
このことから、人間の脳は、コンピュータのCPUとは違うといえます。

次回は、ウェイソンの4枚のカード問題から、人間の脳は、どのようにして計算しているのかについて考えてみます。

 

 

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