脳型コンピュータに本当に必要な機能2

脳型コンピュータに本当に必要な機能2

ロボットの脳を作ろう

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前回は、人間の脳とコンピュータの違いを明らかにするために、「ウェイソンの4枚のカード問題」という心理実験をしました。

コンピュータのCPUは、加算回路や積算回路、浮動小数点演算回路、論理演算回路などを持っていて、コンピュータプログラムは、最終的には、これらの演算回路で計算されます。
同様に、人間の脳にも、何らかの演算回路のようなものがあって、言葉を解釈すると、最終的には、その演算回路で計算すると考えられます。

「ウェイソンの4枚のカードの問題」は、人間の脳が、どのような演算回路を持つかを考えるヒントとなります。
同じ種類の問題でも、簡単に解ける問題と、なかなか解けない問題があるということは、人間の脳には、ある種の問題を解く特定の演算回路があると考えられるわけです。

 

それでは、もう一度、前回の問題を思い出してみましょう。
どれも何らかのルールがあって、そのルールに違反しているかを問う問題でした。

簡単だった問題は、最初の未成年の飲酒調査と、最後の、ハゲ法の問題です。
難しかった問題は、2番目の母音と奇数の関係の問題と、3番目の麺類と値段の関係の問題でした。

こうして比較すると、簡単だった問題には、共通項が見えてきます。
それは、ルール違反している「人」を見抜く問題です。
別の言い方をすれば、社会的ルールを守っていない人を見抜く問題です。

もう少し詳しく考えてみましょう。
もし、あなたが居酒屋で飲酒している未成年を見つけたとき、「あっ」と思うでしょう。
「未成年のくせに、お酒を飲みやがって」などと思うでしょう。
「あっ」と、直感的に気づくわけです。
町を歩いていて、空き缶を道端に捨てる人を見ても、「あっ」と思うでしょう。

一方、「奇数の裏が母音だった」というルール違反を見つけても、「あっ」とは思わないでしょう。
「『母音の裏は偶数でないといけない』はずだから、奇数の裏は・・・、えーと・・・」と、考え込んでしまいますよね。
これは、理屈であれやこれやと考えているわけです。

飲酒をしている未成年を見かけた時、「お酒を飲めるのは20歳以上だから、20歳以下の場合は、その逆になるから・・・」などと理屈で考えたりしないですよね。
理屈を考えるまでもなく、「あっ」と思いますよね。
これが直感的に理解できるということです。

直感的な理解と、理屈での理解の違いは、何らかの感情が発生するかしないかの違いといえます。
たとえば、「未成年のくせに、お酒を飲みやがって」といった感情です。
感情が自然と湧き上がってくるだけです。

こういった感情は、社会で人が守るべきルールを守ってない人を見つけた場合に発生します。
たとえ、そのルールが、たった今作られたばかりで、全く経験したことがないルールであっても、どんなにばかげたルールであっても機能するのです。
「ハゲていいのは55歳以上だけ」というルールができたとすれば、「35歳でそこまでハゲるとは、なんて生意気なヤツなんだ」と怒りに近い感情が、人々の心に自然と湧き起こるのです。
(ハゲには、生きづらい世の中になるなぁ)

 

人は社会の中で生きています。
社会を維持するには、ルールが必要です。
そこで、人間の脳には、社会的ルール判定回路が存在するのです。

社会のルールを守るのは人間です。
つまり、この回路に入力できるのは、人間だけなのです。

前回の4つの問題で難しかったのは、人間でなく物のルールの場合です。 
物の場合、社会的ルール判定回路に入力できません。
そこで、この回路を使うのでなく、理屈で考えて答えを出さないといけないから、難しく感じるのです。

この「社会的ルール判定回路」は、ロボマインド・プロジェクトでいうところの「認知パターン」に該当します。
認知パターンには、その他にも、「感謝」や「怒り」などの感情を出力する様々なパターンが存在します。

 

以上を踏まえて、脳型コンピュータを設計してみましょう。
下の図は、脳型コンピュータを備えたロボットのブロック図です。

 

点線で囲まれた部分が脳型コンピュータとなります。
ロボットはカメラ、マイクなどの外部世界からの入力を受ける「知覚部」と、モーター、スピーカーなど外部世界に出力する「行動部」を持っています。

カメラで捉えた画像データは、記号化の経路と行動の経路の2つの経路に分けられます。
これは、「哲学的ゾンビはクオリアの夢を見るか?2」で説明した、腹側経路と背側経路に該当します。

「記号化の経路」のデータは、捉えた画像を「記号化部」で「リンゴ」や「象」といった記号(単語)に変換され、「記号処理部」に入力されます。
一つの単語(記号)は、多くの関連するデータに結び付いています。
「記号処理部」では、入力データと、関連データを結び付け、記号操作します。
「記号処理部」では、入力された様々な出来事を処理し、その中で、「認知パターン判定部」で処理可能なものが「認知パターン判定部」に送られます。
たとえば、「社会的ルール判定」の場合、「人」が入力され、その人の行動が社会的ルールに違反してないか判定し、違反していれば「ルール違反してる」という結果を「意識」に出力します。
これを受けて、「意識」は「あっ、悪いヤツがいる」と感じるわけです。

 

脳を観察して心はどこまで解明できるか」で説明したように、人間の脳は、意識に近い上位の部分はノイマン型アーキテクチャで構成されると考えられます。
ここでは、「記号処理部」がそれに該当します。
ノイマン型アーキテクチャということは、自由に変更可能なプログラムが実行されるわけです。
つまり、「記号処理部」では、意識が自由に記号を操作できるのです。汎用性があるといえます。
ルールを教えられると、そのルールに従っているか、記号を操作して確認することもできるのです。
これが、理屈で考えるということです。
ただし、ルールを適用するために、意識が、注意深く記号を操作しないといけませんので、答えを出すのに時間がかかりますし、難しいと感じます。

一方、「認知パターン判定部」は、非ノイマン型アーキテクチャの専用回路で構成されると考えられます。
入力さえすれば、一瞬で答えが出て、「あっ」と直感的に感じます。感情が出るのです。
考えるのでなく、感じるのです。
汎用性はありませんが、速く、正確に動作します。

「認知パターン判定部」には、「社会的ルール判定回路」のような専用回路が多数格納されるのです。
この専用回路を共通に持つ者同士が、同じ「心」を持つ者として、コミュニケーションできるのです。
「同じものを見て、同じような感情を発生する」
これが共通の心を持つということです。

 

人間と同じような心を持った脳型コンピュータを作るには、感情を発生させる「社会的ルール判定回路」が必要なことが分かりました。
この回路があれば、人間社会でスムーズなコミュニケーションが取れるのです。

新入社員が、先輩や上司にタメ口をきいて、その場が凍り付いたりするのは、その新入社員は、社会的ルール判定回路が上手く機能していないからですね。

そういえば、僕も、会社員時代は、社会のルールを分かってないってよく言われたなぁ。

でも、糊がなかったから、鼻くそで書類を止めたぐらいで、そんなにぎゃあぎゃあ騒がなくてもいいと思うけどなぁ。

 

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