3次元空間を認識するってどういうこと?

3次元空間を認識するってどういうこと?

目で見て、頭の中で認識されて、意味を理解するまで

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空間

前回の「主観と客観 -自分って何?客観的に自分を見れるって、何ががすごいの?-」で、仮想世界について説明しました。
人が意識している現実世界は、心が作り上げた仮想世界であるということ。
意識は、現実の世界を直接認識しているのでなく、仮想世界を認識しているということ。
その仮想世界が、現実世界を忠実にシミュレートした3次元世界であるので、人は3次元空間を理解できるということ。

つまり、3次元空間という概念は、心が作り上げた仮想世界があって初めて理解できるのです。
いってみれば、3次元空間というものは幻想であって、現実の世界に存在するのではなく、人間の頭の中にのみ存在するといえます。
意識を持たない動物は、3次元空間というものを理解できません。
動物は、3次元世界の中に自分がいるという感覚を持っておらず、世界と自分とを区別することすらしません。

このことについて、もう少し掘り下げて考えてみましょう。

川の手前に犬がいるとします。
川の向こう岸に大きな肉の塊がおいてあって、犬はそれを食べたいけれど、川を渡れないのでワンワン吠えています。
でも、よく見ると、少しはなれたところに橋が架けてあります。
つまり、橋を渡れば向こう岸の肉を取りにいけるのです。
犬は、橋があるのに気付いても、相変わらず肉に向かってワンワン吠えているだけです。

 

 

犬を飼ってると、こういった状況はよくあります。
少し遠回りすれば、簡単にたどり着けるのに、それをしないのです。
このことは、動物と人の心の違いを考えれば理解できます。
犬は、食べ物を見つけると、食べ物に近づいていくように行動パターンが決まっています。
だから、食べ物と自分との間に障害物があると、そこで止まってしまいます。
たとえ、橋が架かっているのを見ても、食べ物に近づくという行動パターンしか持ってないので、遠回りして、一旦、食べ物から遠ざかって橋を渡るといった行動が取れないのです。
欲求が満たされず、ワンワンと吠えることしかできません。

一方、人間の場合は、意識が、現実世界を3次元の仮想空間として捉えています。
川の向こうに食べ物があって、少し離れたところに橋が架かっているのを見れば、遠回りしても、橋を渡って食べ物を取ればいいと理解できます。

 

 

さらに詳しく考えてみましょう。
人は、頭の中で、今見ている光景を上から俯瞰して見ることができます。
自分、川、食べ物、橋の位置関係を全体的に捉えて、直進して川は渡れないけれど、遠回りして橋を渡れば食べ物にたどり着けると、頭の中でルートを描くことができます。
見ている光景を上から見てみるという操作は、頭のなかで世界を仮想世界として再構築したからできるのです。
自分が作った仮想世界だから自由に操作できるのです。
現実世界だと、自由に動かすことはできません。

犬は、食べ物を見つければ、食べ物に向かって直進するという行動パターンしかもっていません。
これが、前回の「主観と客観」で説明した自分と世界が一体となっているということです。
現実世界の中に自分が含まれているという感覚です。
食べ物を見つければ、決まった行動しか取れず、行動パターンを変えることができないのです。
状況を客観的に眺めるといったことは、頭の中に仮想世界を構築して初めてできるのです。

 

作業空間

頭の中で、ルートを思い描くとき、現実世界を再構築した仮想世界に直接ルートを描くわけではありません。
仮想世界に直接ルートを描けば、意識は、現実世界にルートが描かれていると錯覚してしまいます。
ということは、頭の中で考えるとき、仮想世界とは別の世界を作って、その世界を操作しているわけです。
ここでは、その場所を、作業空間と呼ぶことにします。

意識は、何か注目した物を作業空間に移動させ、作業空間内で操作するといえます。
作業空間に置かれる物を、オブジェクトと呼ぶことにします。

聞きなれない言葉かも知れませんが、これは、コンピュータ言語のオブジェクト指向言語から借りた言葉です。
オブジェクトというのは、その物に関するデータを要素としていろいろ持っているもので、たとえば、リンゴのオブジェクトなら、「赤い」とか「丸い」といった要素をもっています。


また、オブジェクトは親子関係も持たせることができて、リンゴの親は果物で、果物の親は食べ物といった関係を持たせることができます。
参考:「言葉の意味をどう定義するか」の概念ツリー

 

作業空間について、もう少し考察してみましょう。

目の前にリンゴが二つあれば、どっちのリンゴが大きいかなぁとか大きさを比べたりできます。
これを作業空間を使って説明すると、意識は、二つのリンゴに注目すると、二つのリンゴのオブジェクトを作業空間に配置します。
リンゴオブジェクトの持つ要素のうち、大きさ要素を取り出し、それらを比較することで、どちらが大きいかわかります。

 

 

このようにして、オブジェクトの要素を使って頭の中でいろいろ操作できます。
これが、考えるということです。

頭のなかであれこれ考える、これができるのが、人の意識です。
人と同じように考えることができるAI。
これが、汎用人工知能(AGI: artificial general intelligence)です。
汎用人工知能の鍵は、意識モデルにあります。

 

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